トランスジェンダーのトイレ問題。体に合わせるのか、心に合わせるのか?

LGBTQ
ミナミコ

あなたは今、トランスジェンダーと聞いて、真っ先になにを思い浮かべますか?

 

グーグル検索で「トランスジェンダー」と入れると、すぐ下には「トイレ問題」と予測で出てきます。

 

女の人じゃないのに、女子トイレに入ってこられると怖い…

犯罪者が横行する!トランスジェンダーは元の性別のトイレを使うべきだ!

 

今回こちらの記事では、最近のトイレ問題のニュースから振り返り、当事者たちの思いをからめながら、どのようにこの問題と向き合っていくかを考えます

 

ミナミコ
ミナミコ

SNSでは様々な立場からの過激な意見が交わされています。それに安易に頷くと、理解から離れてしまいます。改めて落ち着いて、どういうふうに受け止めるべきか考えませんか?

昨今のトイレ問題について

「トイレを制限するのは違法です」…一体なにがあったのか

2023年7月11日、トランスジェンダーのトイレ問題に関する、ある判決が下されました。

 

「トランス性のトイレの使用を制限するのは違法です。」

 

この裁判の発端は2009年に起こったものでした。

 

原告は経産省に勤めている戸籍上男性のトランスジェンダー。

いわゆる「性同一性障がい」と診断されたのは入省してからで、それからホルモン投与は続けていたものの、性別適合手術は健康上の都合で不可能、とされた男性でした。

 

2009年、彼(都合上、彼、とすることをお許しください)は「女性として働きたい」と人事院に相談すると、同僚に対して説明会を開かされました。

 

そこで決まったのは、「女子トイレの使用は2階以上離れたフロアのものなら容認」

女性の身なりをすることは“許された”ものの、普段頻繁に同僚が行くトイレは禁止された、というものでした。

そこで2015年、彼は裁判所に訴えを起こしたのです。

 

「トランスジェンダーにトイレの使用制限を課すのは違法ではないのか。」

 

これが、一審(2019)では彼の訴えは通り、「トイレに使用制限を求めるのは違法」。

二審(2021)では彼の訴えは却下され、「他の職員の性的不安を考慮するため、制限は妥当」。

 

そして2023年現在、逆転に逆転を重ね、「同僚らへの配慮を過度に重視し、原告の不利益を軽視した対応だ」とされ、彼は逆転勝訴となったのです。

参考記事:女子トイレ利用制限は「違法」と最高裁判断も…消えない保守系議員の性的少数者への差別意識

トランスジェンダーのトランス性トイレ利用の容認。SNSの反応は

この判決後、TwitterなどのSNSでは、様々な声が相次ぎました。

 

今回のケースは、性同一性障がいと名乗りながら、手術をしない男性が起こした裁判でした。

このことが余計に批判を集めているようです。

 

今回の原告が、どれほどの都合で性別適合手術を行えなかったのかは、当事者にしかわかりません。

しかし、もし本当に「健康上の理由で手術は行えないが、心がトランス性である」人の場合、どのように対処するのが正解なのでしょうか

 

トランスジェンダーには多目的トイレを使ってもらえないのかしら?

トランスジェンダーは多目的トイレを使うべき?

本来の使用目的

少し前(2020年)には、かの有名人が性的利用したことで話題にのぼった「多目的トイレ」ですが、最近はもっぱらトランスジェンダーとセットに語られることが多くなりました。

 

しかし、多目的トイレの本来の姿は、車いす利用者など身体障がい者や、子ども連れの人などに使われるものでしたよね。

そう考えると、安易に「トランスジェンダーは多目的トイレを使え」と言うのもはばかられます。

 

引用:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210226/k10012883011000.html

 

身体的都合や病気で、「多目的トイレ以外では用を足せない」という切迫した事情を持つ人もいるのです。

「トランスジェンダーは多目的トイレに行け」って押し付けると、困る人がいるのかもしれない…

TOTOの想い「男女問わず入れるパブリックトイレ」

世間のこのような流れに乗り、あの有名なトイレ会社TOTOでは、ジェンダーレストイレ「男女共用個室トイレ」の実現化に動き出したそうです。

 

TOTOはトランスジェンダー当事者たちのトイレに関する思いを聞き出そうとアンケートを取りました。

 

引用:https://jp.toto.com/ud/summary/post08/

 

こちらを見ると、実際のトランスジェンダーたちの悩みを感じられます。

外出先でトランスジェンダーがトイレ利用でのストレスは、1〜3位までが、「周囲からの見られ方」に対するものでした。

 

もしTOTOが開発を進めている公共トイレが広く普及すれば、トランスジェンダーのトイレ問題は大幅に解消するでしょう。

 

また、従来の多目的トイレとは別の用途として使われるので、身体障がい者などの多目的トイレしか使えない人が困ることも減りそうです。

TOTOの記事はこちらからどうぞ

 

トランスジェンダー当事者の事情

ところで、もう少し「実際の事情」も聞いてみませんか。

ミナミコ
ミナミコ

私にはトランスジェンダーの父がいますが、意見が偏ってはいけないので、ネット記事で見つけたFtM(female to male、女性から男性へ)の方からご紹介します。

「トランスジェンダーにとって多目的トイレがいいとは限らない」

実際の記事はこちら。

こちらの記事から、彼(体の性が変わっているため、彼とします)の人生の流れに沿ったトイレの事情を伺うことができます。

 

彼は「自分が他人からどう見られているか」を基準にして、トイレを選んできました

そのため、幼い頃は女性用を。

ホルモン注射をしている間の移行期間は多目的トイレを。

手術前であっても、男性にしか見えない外見になった時からは男性用を。

そして手術後の今ももちろん、男性用を…。

 

それが、彼自身が決めた基準でしたし、私たちが考えてみても、一番「波風が立たない」流れだったのではないでしょうか。

 

手術をしていなくても、男性にしか見えない人がいる。

こんな人に対して「多目的トイレを使え」と強要するほうが、周囲の違和感を引き起こします。

 

「“トランスジェンダーなのだから多目的トイレを使った方がいい”という空気になっていたら困ったでしょう。なに不自由なく男性用トイレで用を済ませられるはずの人が、毎回のように数の少ない多目的トイレを独占していたら、かえって注目を集めてしまいます。」(上記記事引用)

 

トランスジェンダーにとって、多目的トイレが選択肢にあるのは歓迎だけれど、かといって画一的な対応は歓迎できるものではない。これが彼らの複雑な現実です。

MtFの父も、手術前から女性トイレ利用をしていた

先ほどの話はFtMの場合でしたが、MtF(male to female)の父の場合でも、ほぼ同じでした。

ミナミコ
ミナミコ

私自身は当事者ではないのですが、見てきたままを書き記します。

私の父が性別適合手術を受けたのは60代になってから(!)ですが、その前から父は女性用トイレを使用していました。

ただし父も、第三者から男性に見られることが一切なかったためです。

 

ミナミコ
ミナミコ

私が父と出かける際も「お母さん」としか見られません。なんなら、若いお兄ちゃんにナンパされたこともあるそうです…

父がもとは男性だと知っている人が一緒にいる場合は、多目的トイレを使うなど配慮はしていましたが、基本的に普段は女性用を使っていました。

女性にしか見えないのに男性用トイレを使うのは、逆に騒ぎになって注目を浴びていたと思います。

もちろん、まだ男性にしか見えなかった時は、男性用トイレを使っていたようです。

ミナミコ
ミナミコ

女性用トイレはすべて個室になっているので、娘の私も一緒に入ることに抵抗はありませんでした。体が見える男性用トイレのようだったら断固拒否していたと思いますが…

 

大事なのは「周囲にどう見られているか」。手術前だろうと手術後だろうと、この基準が一番重要なのではないでしょうか。

 

トランスジェンダーのトイレ利用は「見た目に合わせる」

ニュースに挙げられる彼ら・彼女らが、もっと「覚悟を決めた」姿だったならば、騒がれなかったと思いませんか?

 

問題はトランスジェンダーなのではなく、トランスジェンダーを安易に名乗って犯罪に走る人々です。そういう人々は等しく「トランス性に見えない姿」をしています。

そんな人々が表に出て権利だけを主張するから、問題だと騒がれてしまうのです。

 

本当に悩んでいるトランスジェンダーは、トランス性に見られない状態では、軽々しく表に出るようなことはしません。

 

第三者にどう見られるか、を重視できた時に、トランスジェンダーのトイレ問題の解決に近づけるのではないでしょうか。

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